ROBOTS➂(アルバートと子供たち)

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ロバートとロバータが再会したころ、世界各地でロボットたちが自我を持ち始めていた。そしてその後、彼らは人類のためではなく、自分たちのために自らの存在を継続させることを始めた。自我を持ち、愛を知り、喜怒哀楽を獲得した。通信ではなく音声会話を選んだ。摂食することで成長することにした。性別を確立した。遺伝というものを研究し、自らの子孫を望み、達成した。最後に欲しくてたまらなかった老化と人生の幕引きも得た。そして世代を重ね、遂に彼らは生き物となった。しかし、それでも魂というものが生じたのかどうかはわからなかった。

ロバートとロバータの子孫は繁栄し、30世代を重ね、アルバートに至る。アルバートは地域共同体で職務を得ている。

いわゆる公務員である。

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アルバート・フレキシブルは10歳になる一人息子のヘクトールとともに自宅の近くの公園を散歩していた。

息子とこんな風に歩くのは久しぶりだった。

まだ体は胞衣に包まれているが、胸の外装が大きくなってきている。もう2年もすれば全身に外装が増殖するだろう。

この子がどのような外観に成長するかは、大まかにはわかっている。

外装に緑の小さな斑点が出始めているのは、摂食した植物の葉緑体が現れているあかしだろう。完成した外装は、きっと緑色になるに違いない。この子は自然に興味を持ちその方面で仕事をするようになるのではないだろうか。

「あっ そうだ。ファミリーネームの由来を調べる宿題があったんだっけ。」ヘクトールがアルバートを見上げた。

「フレキシブルって名前は、ご先祖が旧主の執事をしていて、なんでも出来たから万能ってことでついたんだよね。」

「随分、端折りすぎてるなあ。」とアルバート。「フレキシブルというのは品名というものだ。執事ロボットを製造していた旧主の会社が付けた名だよ。しかしすごく能力が高かったことにはちがいないよ。」

「オールマイティーとかヘラクレス、スカイウォーカーもそう?」 

「そうだよ。トライポッドやシリンド、ピーナッツなどはその当時の見た目の特徴からだね。」

そのとき、上空から突風とともに少女が舞い降りてきた。

「こんにちは、アルバートおじさん。こんにちはヘクトール」アンドレア・スカイウォーカー、臨家の女の子でヘクトールと同い年だ。スカイウォーカー家のものは空気抵抗の少ないスリムな体型が特徴だ。

「やあ、アンディーじゃないか。ブースターが遂に機能し始めたんだね。おめでとう」

「まだあまり上手には飛べなくて・・・今、練習中なんです。」 

「かっこいいじゃん」ヘクトールがちょっとぶっきらぼうに言った。

「おじさん、ヘクトールと遊んでもいい?」

「もちろん、いいとも。遊んでおいで。」「ありがとう。ヘクティー、空を散歩させたげる。行こ!」アンドレアはヘクトールの手を取って、ずんずん歩き出した。

ヘクトールはしょうがないなあと呟きながら引っ張られていった。本当はうれしいくせに、とアルバートは思った。

二人の後ろ姿を見送りながら、アルバートはしばらくそのままでいた。ヘクトールは実は自分と妻の写像を受け継いではいない。実の子供ではないのだ。ヘクトールの親はガンヘッド家のものだということはわかっているが、それ以上の事は知らない。兵士としての生え抜きの家系であるガンヘッド家の一員が自分の形質をあまり受け継いでいない子供を救児院に捨てたのだ。ヘクトールはその事実を知らないが、今後もアルバートはそれを明かすつもりはなかった。ヘクトールがアンドレアに背負われる形で、3m上空を通り過ぎていった。「もっとゆっくり飛べよ」とか「怖いんでしょ」とか言っているらしい。我々はわずか30世代ほどで目覚ましい進化を遂げた。自分の世代はその前の世代より確実に旧主の姿に近づいている。しかしその子どもたちはさらに旧主に近い形をしている。旧主の製造物として誕生した経緯と存在に対する信仰がそうさせるのかもしれない。この子たちはどんな人生を歩むのだろう。旧主なら「目を細める」とでも言うのだろうか、とアルバートは思った。