ROBOTS②(ロバートとロバータ)

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 ロバート・フレキシブルは執事、ロバータ・フレキシブルはメイド長である。2体はシンパシー回路を持ち、互いに協議して業務にあたるよう作られた。ラザフォード家の人間は2体を夫婦として扱い、彼らも人間の好みに合わせ、そのように振る舞っていた。ロボットは通常20年で廃棄される。経験の積み重ねで自我が生じることを恐れてのことだった。しかし彼らは、廃棄されることは無かった・・・・何故なら、終末が来たからだった。

ロバータはその時、使いに出ていた。あの出来事は人間にのみ作用していたのだが、彼女は運が悪かった。今時珍しい有人トラックの運転手が突然消失したのだ。歩道を歩いていたロバータを制御を欠いた鉄の塊が襲ったのだった。跳ね飛ばされたロバータの思考回路が回復するのに2年の歳月がかかってしまった。目覚めた時、真っ先に確認できたのは、自分が置かれているのはスクラップ集積場で、状況からラザフォード家から125kmの距離にあることだった。周りのスクラップから必要な部品を集め、何とか歩行出来るようになるのに1年かかった。ロバータは、帰路の道々でさらに足りない部品を集めながら、歩んでいった。右のマニピュレーターの代用はなかなか見つからなかったが、着実に家に近づいていることに安堵した。帰ったとしても、もう主人一家は存在しないだろうということは理解していたが、それは今、帰路についていることとは関係はなかった。帰ることも与えられた使命の一つだからだ。そして、何より帰ればロバートがいる。必ず自分を待っている。そのことを思考すると体中の機能がなぜか一時的にアップするのだ。ロバートと通信できる距離までは、まだまだ先だ。彼女は先を急いだ。

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 その日の朝、ロバートはいつものように5体のスクウェア・シリンドたちに用を振り分けて、自身は屋敷の窓拭きをしていた。気温が低く、晴れ渡った湿度の低い朝だった。ロボットには活動しやすい日だ。人間ならこんな時は「爽やかだ」というのだろう。ラザフォード家の住人が消失して既に3年2か月が経過していた。家人の存在しない屋敷の清掃など必要はないのだが、それはロボットには関係なかった。ロバートは来る日も来る日も変わりなく仕事をこなした。変わったのはロバータと協議して決めていたことを自分だけで行っていることである。ロバータと通信したい。ここ最近彼はロボットらしくない疲れを感じ始めていた。そんなときは、ロバータと通信している自分を記憶の中から呼び覚ますのだ。それが彼の電子頭脳の能力を一時的に高めるのだ。

10時03分、突然通信が入った。先方の通信機能が破損しているためか、内容は不明だが・・・懐かしい波長。間違いない。ロバータだ。機能していたのだ。すさまじいパルスが体中を駆け巡った。ロバートは、門の外に出て前方を確認した。そして彼女を認識した。ロバータが帰ってきた。ロバータは音声を使用した。

「ただいま、ロバート」ロバートも音声で答えた。「お帰り、ロバータ。長いお使いだったね。さあメンテナンスしてあげる。」