ゴブリンたち「旅立ち」

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 キルロイは食料の菌核の入った包みを地面に置いて、見送りの二人のほうに向いた。「気を付けてな。必ず帰って来いよ。」村で唯一の友達であるディゴルがキルロイの肩に手を置き言った。

「一つ言っておく。このような役割を押し付けてすまない。しかし決してお前の血縁者が居ないからだけではないのだよ。」長老ゾーリが言った。「お前なら、困難に立ち向かえる英知を持っていると皆が思ったからだ。オルゴもお前を指名した。」

「ええ、わかっていますよゾーリ。安心してください。村に必ず青い輝き石を持って帰ってきます。」キルロイは笑顔で答えた。見送りがたった二人だということには触れなかった。

・・・・・キルロイは、どことも知れぬところから流れてきた女ゴブリンの連れ子だった。この端っこ森に現れた時にはキルロイの母親は疲れのためか瀕死であった。ほどなく女は死に、まだ頑是ない子供が残された。子供は細かったのでキルロイ(やせっぽち)と名付けられた。キルロイは長ずるにしたがって、背が高くなり、ずば抜けた賢さを見せるようになった。しかしその異相(背が高く、手が地面に届かない)と出自により、村人からは嫌厭され、孤立するようになった。キルロイと親交があったのは、やはり孤児のディゴルと長老ゾーリだけだった。

ゴブリンの住む端っこ村はあの恐ろしい人間という巨大な種族の世界とすぐ隣り合わせになっている。今までも人間の世界と森の国がつながることはあったが、それは霧の向こうに揺らめく陽炎のようでしかなかった。しかしここ数年、それがはっきりと目視できる時が出てきたのだった。そしてついにあちらの世界に生き物である犬が迷い込んだ。幸いその犬という生き物が悪さをすることはなかったが、そのうち人間と遭遇する日も近いだろう。村では村を捨てるかと論議された。

オルゴが村に来たのは、そんな時だった。オルゴは、人生のほとんどを旅して過ごした。森の国のみならず、なんと人間の世界も旅したと言った。実際、村にも人間の世界のほうから入ってきたのだった。村の問題についての彼の見解は、世界の境界は時として移動するとのことだった。たまたま今の時代に人間側の力が強くなってきているらしいのだ。ゾーリが解決策を聞くとオルゴはこう言った。「森の国の中心にある真ん中森のにある青い輝き石のかけらを持って来れば、境界は安定するだろう。」・・・すべてはここから始まった。中心の森に行くのは血縁のないキルロイ。ゾーリが案内する。

キルロイはディゴルに「ちゃんと帰ってくるよ。土産話を楽しみにしててくれよ。」と言った。

「早く出発せねば、霧が出てきそうだ」オルゴがじれたように言った。

「では行ってきます。」オルゴとともにキルロイは村を後にした。