獄卒・・・グール(屍食鬼)のハンコックとJr

P5010062 暗い回廊を進むにつれ、鼻をつく臭気が次第にひどくなっていった。王都の仲間に連絡を取る役目を果たす前に、ラフィニールは捕縛された。足には自信があったが、騎馬兵の機動力の前には役に立たなかった。二人の衛兵に引き立てられ、回廊の先に鉄の扉があった。先頭の衛兵が扉のカギを開け、ラフィニールをその中に突き飛ばした。「痛い、何するんだ」ラフィニールは、その衛兵を睨み付けた。もう一人が「可哀想に・・・これからもっと痛くなる」とつぶやき、鉄の扉をしめた。部屋の中は、中央のはめ殺しの天窓以外に明かりはなく、奥行きがどれほどかよくわからなかった。何か気配を感じた。何かがいる。とても嫌な感じの何かだ。そして奥の暗がりから声がした。「これはなんと、かわいいパーンの坊やだ」狼の唸りを人語にしたような寒気のする声だ。声の主がゆっくりこちらに歩いてきた。歩むたびに足音とともに粘る音がする。ラフィニールまであと2mというところでその者の姿が見えてきた。その痩せた小柄な全身は乾いた血のりでおおわれて、テラテラと光っていた。これは・・・・グールだ。そのグールはまるで人間の紳士のようにポーズを取り、言った「わしは、ハンコックという。見ての通りのグールさ。グールは元来名を持たぬのだが、バロシア王より戴いたのだ。これは、とても光栄なことなのだよ。」ハンコックは言葉をつづけた。「わが一族は拷問を生業としておる。わしも、長年この仕事をしているが、今日ほど心躍る日はないな。何せ、パーンの可愛い坊やだ。」腐臭と排泄物の臭気がひどいこともあるが、自分のふがいなさ、恐怖、こんなところで一生を終えることの不運に、ラフィニールの目に涙がうかんだ。「しかしながら今日、坊やの相手をするのはわしではない」「ジュニア。ジュニアこっちにおいで」その時、奥の暗闇からひときわ大きな体躯のグールが姿を現した。「パパ、こいつ食べていいの。おなかがすいたよ。」痰が絡み、鼻がすっかり詰まってしまったような声だった。ハンコックがいとおしげに「まだ駄目だよジュニア。さあ初仕事だ。」 そして振り返り言った「こう見えてもまだ6歳なのだ。力加減もまだわからんのだ。早く吐けばすぐ死なせてやる。いくら頑張ってもここより生きて出ることは、叶わんのだよパーンの坊や。早く吐いてジュニアの糧となれ。」その時だった。轟音とともに天窓が破られ、突如大きな赤黒いものが落下してきた。大量の土埃が舞い上がった。そして吹き込んでくる風と共に、硫黄のにおいがした。

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