有角有翼の男・・・ドラガン=サルファー

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こんなところまで来たのは、久しぶりだった。たまには硫黄の臭気を含まない風も悪くない、とドラガンは 思った。彼の背後には広大な火山地帯が広がり、辺り一面硫黄の臭気で満たされている。有角有翼の種族はこ こを住み家とし、ここで生育する動植物を食料としてきた。そのせいか彼らの体も硫黄の臭気を発し、体色も 赤黒い。他のいかなる種族もこの地では生存できないが、耐性のある彼らは、繁栄していた。ここはデッドランド。バロシアの 暴虐な王の権威も及ばぬ場所だ。我らには平和な住み家だ。しかし他の種族との没交渉は忘却をもたらし、われらはその存在すら忘 れ去られてしまうだろう。それでよいのだろうか。今、眼下に広がるこの山の裾野を、一人のミノタウロスが、ここをめざして昇って きている。配下をキャンプに残し、ただ一人だ。見張りの話では左の角がないらしい。話に聞くディビッド= マッケンという人の名を持つミノタウロス、異界より帰還したという獣頭の王族最後の一人だろう。なんと、あの他者と相容れぬ人 馬とも同盟を結んだらしい。ここに来る目的はわかっている。まずは、どれほどの器量か見極めてくれよう。 ドラガン=サルファーは腕を組んだまま、緩やかに翼を広げ、眼下からの上昇気流を受けた。