ケンタウロス…アルガン=リキニウス

 

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雨のめったに降らぬこの地に、人馬たちが集結している。長老の登場を待っているのだ。人馬のすべての部族を統べる長老は長らく空席であったが、このたび20年ぶりに決したのであった。彼の名はアルガン=リキニウス。まだ26歳という異例の若さでの就任だった。長年の内乱鎮圧の手腕を買われたのだった。人馬たちがざわめき、落ち着かなくなり始めたころ、力強い蹄の音とともに丘の上にアルガンが現れた。長い髪を、旋毛周りのみ残してそり落とし、根元を縛っていた。痩身ではあるが鍛え抜かれた体躯と勇者の髪型をした彼の登場に歓声が巻き起こった。彼は、騒ぐ人馬たちをゆっくりと見回し、やがて屈みこみ土くれを一つ持ち上げた。するどいまなざしでアルガンは眼下の人馬たちの騒ぎが収まるのを待った。その様子に、人馬たちのざわめきも収まり、やがて声をあげるものはいなくなっていった。風の音しかなくなった時、彼は土くれを握りしめ、ゆっくりと小指から手を開いた。指の隙間から、土が煙のように風に乗って流れてゆく。 「この痩せた土を見よ」アルガンが口を開いた。「われらは、人馬の誇りにかけてあの母なる地を取り返さねばならん」 地響きのような歓声が巻き起こった。